阿知波弘人 (カービングリサーチ)

*一本の丸太から感動を!*

「これくらいあればいいだろう。」と言って4種類のチェンソーを取り出した一人の職人。チェンソー作業用の安全眼鏡、靴、防護服をしっかりと身にまとい、チェンソーアートが始まった。彼の扱うチェンソーが大きな音を立てておが屑を飛ばしながら一本の丸太を切り刻んでいく。丸太の中に切り取り線が印されているかのように、次々といろいろな角度から彫り込まれていく。その丸太は30分もかからないうちにフクロウの形へと変わった。まるで一本の木の上に最初からとまっていたかのようだった。

 

西尾市のチェンソー彫刻家、阿知波弘人さん。チェンソーアートを始めて6年目になる。家のインテリアとして、お店の看板代わりとして、大きな存在感を与える木の彫刻。オーダーメイドでの製作もしている。前職は自動車メーカー営業として働いていた阿知波さんがこの仕事を始めたきっかけには、ある一人のチェンソー彫刻家との出会いがあった。その人の作る彫刻作品に魅了され、同じような彫刻をやりたいと思ったと言う。営業マンとして活躍していた頃も、休みの日にはいくつもの丸太をひたすら刻んで練習をしていた阿知波さん。「チェンソーは切ることしかできないけど、たくさん切るか、少なく切るかで形ができてくる。」と話してくれた。

 

しかし最初は全く上手に彫ることができなかったという。目標とする人たちの作品に近づけようと製作していたが、同じようにできない。

 

「どうして上手く彫ることができないのか。」

 

その答えは、「木に逆らわない」ということだった。「もう少し切り込みを入れたいなと思っても木が嫌がったら、そこで止めておく。木が嫌がるということは木目が出なくなるということ。木の彫刻というのは木を読むアートだから、出来るだけ木目をきれいに出すような彫刻を求めた。」と話してくれた。

 

木目は年輪や平行線だけではない。切り方でちがう柄が出てくると言う。阿知波さんは、チェンソーの上下左右の動かし方や刃の使い方を、いろいろな組み合わせで使うことで木と対話しているのだ。

 

 「薪作りに使っていたチェンソーを使ってアートができ、多くの人と感動を共有することができる。」と阿知波さんは言う。

 

 しかし作品からは想像のつかないような危険がチェンソーアートには伴う。

チェンソー作業時に身に付ける安全装具はもちろん、常にチェンソーのメンテナンスを行ない安全を確保したとしても、一歩間違えると大惨事にもなりかねない。しかし阿知波さんからはそんな恐怖心は全く感じられなかった。チェンソーアートができるということを嬉しそうに話してくれた。今後も阿知波さんの心の中にある想いがどんな作品として現われるのか楽しみである。

 

※上記の内容はすべて取材当時のものです。