石山哲也(株式会社スクラッチバック)

*身近な余りモノが世界を変える*

 

株式会社スクラッチバックでは「エコリマインズ」と銘打って、これまで産業廃棄されてきた壁紙(クロス)等の内装材を再利用したバッグやブックカバーといったエコ商材の開発を行っている。それだけでなく、これらの製作を障がい者支援の一環として各施設へ制作委託している。       

障がい者の雇用創出も含めたエコリマインズの展望について、企画営業部の石山さんにお話を伺った。

 

-大量の廃棄-

 エコリマインズとは、ECOLOGY(エコロジー)と“余り物”を意味するREMAINS(リマインズ)を組み合わせた造語。どうしても産業廃棄されてしまう身近な余り物で、世界を変えていきたいという彼らの想いが込められている。

 

 この活動が始まった経緯として、内装業を営む株式会社ルークの社長から持ちかけられた相談がきっかけだったという。

 「内装材がどうしても余ってしまうので、どうにかできないかという御相談でした。壁紙を張る際、面積と同等のストックを用意しておかなければいけない業界のルールがあるようです。壁紙に不良があったり職人さんが失敗してしまった時のために、同じ柄を保証期間中保管しなければいけません。でも日本の職人さんは優秀でミスも少ないので、最終的に大量の未使用内装材が余り、産業廃棄されているのが現状です。」

 

 この現状をどうにか改善出来ないかと考えたとき、もともと大学の広告代理店業務がメインであった石山さんたちはクライアントである大学や企業向けに手提げバッグを提案したのだという。そして試作を重ね、「これはすごい!」というクライアントのアンケート結果も得られた。

 

 「従来のような紙袋やポリ袋などを提案する袋業者は星の数ほどいる。こういった業者さんは必ず見積もりで争わされ、一円でも安いとこが仕事をとっていきます。そうなってくると中国や東南アジアにある工場で製作する為、国外に雇用を生み出すことになるんです。」

 石山さんたちは国内の、しかも障がい者施設を制作の場所として選んだ。こうして、これまで低賃金で労働していた障がい者の雇用環境改善も含めたエコリマインズが動き出した。

 

 石山さんたちが岐阜県にある内装材メーカーを訪れると生産時のロスとして出る端材やデッドストック品等、実際には予想よりもはるかに多い廃棄物が出ていることを知ったのだという。メーカーにとっても廃棄することにお金がかかるため、石山さんたちは自らの信念を伝え協力を仰いだ。こうして現在では、数々のクロスメーカーやリフォーム会社の理解を得て、豊富な種類の端材提供を受けているという。

 

―高級感、撥水性のある素材―

 近年の内装材は流通する前の審査もしっかりしており、フォースター認定のホルムアルデヒドを含まない素材が使用されている。そんな人体にとって安全な点と、内装材特有の高級感あるデザイン性によりユーザーの反響も大きかった。そのため一回採用した大学や企業はなかなか元の紙バッグには戻そうと思わないのだという。

 

 「多少コストはかかりますが、それでも大学•企業側にとって社会貢献に配慮していることへのPRにもなりますし、重要な広報物にもなり得ます。但し競合他社との差別化にも使っていただきたいのであらゆるところに提案しているわけでなく、ある程度地域の中で数を限ってご提案しています。」

 

 本業の広告業で取引のあった愛知学院大学は、試作としてまだ世に出ていない時から理念に共感してくれていたという。もともと撥水性の高い内装材であるが、内側にpp貼りをほどこしてより強度を高めることも、愛知学院大学からの意見を受けてのものだったという。こうしてユーザーの大学とともにつくりあげられた紙バッグはオープンキャンパスで何万枚もの数で使われ、端材を利用した少しずつ柄の違うバッグがキャンパス中を埋め尽くす。全てが同じ柄、同じ精度が要求されてきた今までの袋とはまったく逆の発想であった。

 

-障がい者雇用の改善を-

 「iPadケースをこのクロスで作れないかという問い合わせもあります。もちろん作ることは技術的には可能なのですが、私たちの目的は障がい者支援でもあるので、そもそもそこまで複雑なものを作ることは考えていないんです。コンセプトから離れる事も懸念しています。」

 ここまで彼らがブレずにエコプロダクツと障がい者雇用の支援に取り組むのには、社長である沼田さんが目の当たりにした障がい者施設での現状にあるのだと言う。

 「社長である沼田には身内に障がいを持っている方がいまして、多くの施設を見てきたそうです。障がい者施設でどんな作業を請け負っているのか、どんな条件で働いているのか、どういった作業レベルなのか。充実した仕事をしている施設は多くありませんでした。機械系の内職業であったりだとか、障がい者の人に対してとても安い賃金で仕事がおりてくるんです。月の賃金が、全国1位でも2万円弱と言われています。」

 

 この現状を変えるために、障がい者に対する認識を各企業に見直してもらわなければいけない。そのためには障がい者の人たちの仕事のクオリティーを発信しなければいけないんだと、石山さんは話を続けた。

 「こんなにも綺麗で丁寧な仕事をしてくれるんだということを発信すると、発注する側の考えは変わります。」

 健常者と同等の賃金で作業委託する為、従来の中国製の紙袋よりコストがかかってしまうのだが、こういった背景や想いに共感し採用してもらえるケースが増えているのだという。

 

 「内装材の転用性というのは多々考えられるのですが、私たちがベースに考えるのは障がい者の方がやれるものかどうか。全国にどれだけ波及していくか考えると結構な可能性を秘めているので、闇雲にラインナップを増やすということは考えていません。一個一個を大事に提案していきたいです。」

 

―私たちの責任―

 自分たちが携わった製品が、どのように世の中へ流通されているのかも分からないまま仕事をしている障がい者も多いのだという。

 「ボルトにネジを通す作業が決して悪い事ではありません。おそらくそれがどこに使われているのか説明もないだろうし実感も湧きづらいです。でもこういった袋ならどういったものをつくっているのか認識しやすいし、○○大学と箔押しもあってどんな人が使ってくれているのか説明しやすい。それに新聞等に取り上げられたとき、その記事を切り抜いて施設に持って行くと彼らのモチベーションがとても上がります。すると、仕事の効率であったりクオリティーも上がってきますしね。ミスなく丁寧につくらないといけないなという責任感も出てきます。」

 

「この現状を知ってしまった以上は誰かがやらなければ何も状況は変わらないので、

私たちで実施できる範囲から、出来る限りやっていこうと思います。」

 

 今後は、他県の施設にも協力を仰ぎ全国的に拡大していきたいという。住宅建築の端材だけでなく、私たちが普段何気なく捨てているものは多いはず。何か生み出すごとに発生させてしまう存在と真剣に向き合い、頭を使ってその先まで責任持って見届けることの大切さを石山さんは教えてくれた。

 

※上記の内容はすべて取材当時のものです。