伊藤安則(丸安ニット株式会社)

*広がる和紙の可能性*

 創業70年続くニット生地•ニット製品製造の老舗、丸安ニット株式会社。近年では和紙糸を用いた新ブランド“siffon【紙ふぉん】”を立ち上げ、靴下への展開など意欲的に新商品への挑戦をしている。3代目となる伊藤安則社長は、とても笑顔溢れる気さくな人で「身につける和紙」の魅力について教えてくれた。

 

-ニッチであること-

 

 伊藤さんは、これまでにもリバーシブルジャガーニットの“maffon”でも業界を賑やかしてきた。日本には数台しかないと言われるダブルジャガードの機械を駆使して編み上げられるmaffonは、毎回完売になってしまうほどのヒットブランドとなった。その表面には点や線、柄などの複雑な模様がとても美しく裏と表に織り込まれている。ダブルジャガードはメンテナンスやデザインの作り込みが難しく、非常に扱いにくいものなんだと伊藤さんは教えてくれた。

 

 

 

 ランダムに色彩がちりばめられた生地を広げた伊藤さん。

 

「こんなめんどうな商品だれも作らないよ!うちは生地オタクの集まりだね。」

 

 ニッチな分野を牽引してきた、なんとも伊藤さんらしい言葉だった。

 

 

 

-和紙糸-

 

 そんな特異な存在である伊藤社長が、次にうち出したのが“siffon”であった。社長になる以前、岐阜県にある会社で修行していた頃に出会った和紙。耐久性などの問題をクリアするため、10年近くの歳月をかけて開発を進めてきたのだという。

 

 

 

 美濃和紙を使用しているsiffonは高い吸湿性や紫外線対策、抗菌作用による脱臭効果など優れた性質を持つのだという。男性向けカテゴリーとしてsiffonの中には名古屋ブランド「わしだがや」というシリーズがある。和紙糸と木綿糸を1対1の割合で混合しているこのビジネスソックスを試しに履かせてもらったのだが、大変サラッとした気持ちのよい履き心地であった。耐摩耗テストをこなしているだけあって、もちろん破れる気配もない。

 

「紙でもこんなに強いということや、従来の靴下との違いを足先で感じてもらいたい。テクノロジーが集結した靴下なんです。本当にすげ〜でしょ!」

 

 

 

 女性をターゲットにしたsiffonにはシルクを混ぜるなど、それぞれの層に最適な履き心地となるよう調節しているのだという。また和紙は生分解性繊維なので廃棄することになった際も、負荷なく自然にかえすことができる。「エコロジーなんだけどテクノロジーなんだよね〜」と、機能面だけでなく、環境にもやさしい循環型素材であることを力説してくれた。

 

 従来、実現が難しいと言われていた天然素材和紙への挑戦。今後は海外から来たビジネスマン・観光客への訴求や、和紙糸の特徴をいかした様々なものへの展開など、伊藤さんの挑戦は止まらない。

 

※上記の内容はすべて取材当時のものです。