JUNK LAW

*閃光が呼び覚ますジャンクの鼓動*

 愛知県犬山市にある建機工場。工場の時計針が終業時間を過ぎた頃、再び開始の合図を知らせるかのような溶接音があたりに響き渡る。ジャンクアートを始めて20年。年に1つか2つしか作品はつくらないというJUNK LAWさんが、今日も少しずつ大事な作品に命を吹き込んでいる。

 
 
-“今”を注ぎ込む-

 作品の持つ力強さや、しなやかな曲線美。どの作品も計算され尽くされたかのようなバランスで構成されている。しかし、JUNK LAWさんの作品に設計図は存在しない。

 

 「制作には何ヶ月もかかります。でも何ヶ月も前に書いた設計図は過去のものだし、出来上がった時には最初に思っていた以上の作品を作るつもりなので用意はしないですね。過去に描いたものを見ながら作る...なんだかもったいないよね。せっかく毎日違うモチベーションで生きてるんだからさ。」

 

 そして意外にもJUNK LAWさんはジャンク100%にはこだわらない。ジャンクの持ってるかっこいい部分は取り入れつつも、自分の思ってる理想に近いものを作るため鉄屑以外も使うのだという。

 

 

-鉄男-

 ジャンクアートを始める前、JUNK LAWさんには将来への漠然とした不安があったという。

 

「自分には何もない、これからどうしようかという思いでした。バンド活動とかやっていましたが、それも違うかなと。そんなタイミングで、塚本晋也監督の『鉄男』という映画を目にしたんです。」

 

 『鉄男』は1989年公開の怪奇映画。とある平凡なサラリーマンの身体に突如現れた金属片。日に日に金属に侵食されていく恐怖を、独特の映像表現で描いている映画。

 「こういうものも表現として世間では認められるのかと衝撃を受けましたね。単純に“かっこいいな”とも。ちょうど家業が建機業で、工場の中には鉄屑もたくさん転がっていました。映画と似たロケーションであったことや、捨てられる鉄屑に当時のどうしようもない自分を重ね合わせたことがきっかけだったかもしれないですね。」

 

 鉄屑と自分の境遇。それらは方法次第でつくり変えることができると確信したJUNK LAWさん。

 
「これで俺も暴走してみるか!ってね。いざジャンクアートを始めてみると幸いにも周囲の評判も良く、褒められるのってこんなに気持ち良いものなのかと感じました。」
 

-自分の中に無いものはつくらない-

 「テレビ出演の機会もあり、より見栄えがする大きい作品を制作開始当初から作ることが多かったですね。大きいととりあえずみんな驚くじゃないですか。強く、より大きく、そして重量感を。20代の頃はそういう作風が多かったです。今、当時の作品を見てもちろん恥ずかしさもありますが “青臭くていいな” って思えます。」

 

 アートの競技等で、ひたすら他人を打ち負かしたいという一心で作品に取り組んでいたかつてのJUNK LAWさん。時が経ち、徐々にそんな作風や考えにも変化が現れていったという。

 「年を重ね、結婚したり子どもができたり仕事の立ち位置が変わってきたりといろいろありました。次第に、嘘をついてまで自分を大きく見せることがめんどくさくなってきたんですよね。だから自分の中に無いものはつくらない。自分の気持ちに嘘をついてまで人を驚かせたいとは思わないんです。“自分は他の人と違う感性がある、すごいでしょ?”ということはやりたくないね。」

 

 JUNK LAWさんが嘘をつきたくないというのは作品だけではない。作品の撮影にもたくさんの労力を注ぎ込んでいる。一体のジャンクアートが竹やぶを駆け抜ける写真など、CGではないかと目を疑う写真の数々。あくまでJUNK
LAWさんは実写での撮影にこだわっているという。

 

「女性をモチーフにしたジャンクアートも半年間かけてつくりました。それならば半年間毎日、たくさんの時間を一緒に過ごす女は、とびっきり良い女じゃないといけないじゃないですか。そこで、自分の中でとびっきり良い女ってなんだろうって掘り下げる、そこに嘘をついてたらキリが無いですよ。」

 
 作品に対して非常に長い時間をかけ、噓偽りなくまっすぐ向き合うJUNK LAWさん。それだからこそ鉄臭さだけでなく、人間臭い表情もJUNK LAWさんの作品から感じとることができるのかもしれない。
※上記の内容はすべて取材当時のものです。