伊藤木綿 & 村口実梨 (まり木綿)

*カラフルでポップな有松鳴海絞りの新しい世界*

 有松駅付近に、「まり木綿」と書かれた看板が目印となる細い路地がある。その先にこのお店はあった。店内にはカラフルでポップな色合いのさまざまなデザインの手ぬぐいや地下足袋が中心に置いてある。お店に入ると若い二人の女性が笑顔で迎えてくれた。お店を持ち、店内の作品のつくり手でもある伊藤木綿(イトウ ユウ)さんと村口実梨(ムラグチマリ)さん。

二人が身にまとっていたワンピースも、ご自身が絞りで製作されたとても魅力的なものだった。

 

 名古屋芸術大学出身の彼女たちが有松鳴海絞りを初めて体験したのは、大学三年生の「地場産業との連携」という授業だった。初めは紺一色で染めていたと言う。「一色であっても、たたみ方や絞り方で十人十色、違う物が出来てきて、さらに色を加えていくと本当に様々な表情が出てくるんです。それが凄く楽しくて、いろいろ染めていきました。」と言う伊藤さん。授業の中で作った二人の作品は、講師として来ていただいていた地下足袋ブランド「SOU・SOU」の社長の目に留まり、「SOU・SOU」とのコラボレーション作品製作へ至った。その後、彼女たちが作品製作のために自主的に通っていた久野染工場の協力を得て“まり木綿”は立ち上げることになったのだ。

 

 今回、その彼女たちの製作場所となる久野染工場で実際に地下足袋を染める様子を見させていただいた。作業服を着て、お店にいるときとはまた違う眼差しだった。無地の地下足袋が彼女たちの手によって鮮やかな色を持ち、だんだんと活き活きとしてくる。

 

 二人が作る作品は渋いイメージのある絞りではなく、今まで目にしたことのないような華やかな絞りだ。「雪花絞りは可愛らしい柄が出るので、新しく色を付けたらもっと可愛いくなるんじゃないかなと思い、いろいろ色を使うようになりました。」という村口さん。

 

ここでは今までの有松鳴海絞りのイメージとは違うカラフルな絞りが多く染められているのだ。400年の歴史がある有松鳴海絞りを残していくために身近な存在として感じてもらい、日常に取り入れていくことが大切だと思っていると話してくれた。

 

 そんな思いから彼女たちが一つ一つ手描きで染めていく地下足袋。様々な色合いやデザインのものが並んでいる。「置いてあるだけだと派手に思われがちですが、履いてみると意外とスニーカーと変わらない派手さですよ。ちょっと派手なブーツと思って履いてみえる方が多いです。」と教えてくれた。試着すると歩きやすさ、普段の服装との合わせやすさに気づき、気に入ってくれる人が多いそうだ。

 

 今までにないもの、今までにない色を追求していく彼女たちは、今後さらに衣料や小物など普段の生活に取り入れやすい物を増やしていきたいと語ってくれた。伝統をこんなにも身近に肌で感じることができる“まり木綿”の作品は、きっと幅広いの世代の人に親しみ続けられるだろう。そして有松鳴海絞りの伝統を守り続け、牽引していく大きな存在として注目していきたい。

 

※上記の内容はすべて取材当時のものです。