Mon Srikalang

*ホームレスアーティスト*

 タイのバンコク市内で、ホームレスアーティストとして多くの人々から注目を浴びている、Mon Srikalangさん。約26年間、スクンビット通りで場所を移すことなく “ヘンプアニマル”を一人で作り続けている。

 

 

-パフォーマーとして-
 ヘンプとは農薬や化学肥料を使用せずに育てた「麻」のこと。ヘンプアニマルはこれを使って作られる動物の置物である。Srikalangさんによって一本一本鮮やかに編み込まれたヘンプは、たちまちリュウやゾウへと形を変える。
その巧みな手技は次々と街を行き交う人々の足を止めていく。

 

 ところがSrikalangさん自身、自分がアーティストであるという認識はないという。

 

「私はたまたまこれらの動物を作る仕事をしている平凡な男です。子供の頃は、布切れを劇場にまくしたてて、たいまつをライトにしてペーパーパペットショーを作っていました。当時のお客さんは、友達だけですけどね。それが今は作るものがヘンプアニマルに変わって、お客さんの幅が広がっただけなんですよ。」

 

 現在Srikalangさんはアーティストという肩書きではなく、多くの人を楽しませるパフォーマーとして作品を作り続けている。

 

 

-初めてのお客さん-

 Srikalangさんがヘンプアニマルを作り始めたのは1986年。

「多くの外国人たちがタイに来ては、みんなが簡単に物を売っているように見えました。少しでも収入を得ようと、私もヘンプで動物を作り始めました。」

販売を始めるのに選んだ場所、スクンビット通りには日々たくさんの外国人が集まり、Srikalangさんの作品の周りにもすぐに人々が見に集まった。

 

 ところが不幸にも、ホームレスで痩せた体をしたSrikalangさんに対し、集まった人の何人かは、からかって罵声を浴びせていったという。

 

そんな中、初めて作品が売れたときのことを今でも鮮明に覚えていると話してくれた。

 

「若い女性が、馬をほしいと言ってくれたんです。わたしは彼女に値段を聞かれるまでいくらで売るのか全く考えていませんでした。その時に80バーツ(日本円で約240円)と値段をつけました。初めてのお客さんの存在がすごく嬉しくて、道具を片付けるとすぐに寝場所であるお寺に戻ってノートにお金をはさみ、それを棚の上において拝みました。この時に、これからも生きていけることを示された気がしたんです。」

 

 この出来事がSrikalangさんにとって、逆境に負けず制作を続けていくことを心に決めたきっかけであったという。

 

 

-伝え続けたい技術-

 ヘンプアニマルを販売するために初めて腰をかけたスクンビット通り。そこで長い間制作し続けるSrikalangさんは、もうこのエリアではすっかり有名人である。

「最近は新しい動物の形をうみ出しながら、この技術を誰かに継承したいと考えています。そのためには同じ言語を話し、根気があってモラルがある人が必要です。長年作り続けて気が付いた自分の技術を、絶えさせずに伝えていきたいんです。」

 

 ホームレスで安定した収入があるわけではないが、Srikalangさんはいつも笑顔で陽気に制作に励んでいる。もともと生きる手段として作り始めたヘンプアニマルは、現在多くの観衆を魅了し、Srikalangさん自身にも生きていく大きな活力を与えている。

 

 

 

 担当記者:原田真未