中囿義光

*変化を楽しむ銀の彩り*

岐阜県多治見市、緑溢れる山道にstudio MAVOがある。ここは20名程の陶芸作家さんが集まる製作所。その中にジャズが鳴り響く部屋があった。中囿さんのアトリエだ。外へ出ると景色を眺めることができる開放的な空間だった。

 

アトリエに入るとすぐに、制作工程を見せてくれた。瀬戸のブレンド土をしっかり混ぜるための粗練りから始まり、大きな菊の形をまといながら一つにまとめていく菊練りに入る。その後の成形は手びねりとロクロを使う2パターンがある。どちらの方法も中囿さんの手にかかるとあっという間に形が出来上がる。すぐにつぶれてしまう素材のやわらかさを感じさせない手つきに、思わず夢中になってしまった。

 

中囿さんの陶器は一瞬で目を引く鮮やかな色とポップな柄をまとっている。そして「銀彩」という技法を用いて作る作品は、最初に見た土の粘土からは結びつかない。銀箔や銀泥を用いて自由にデザインを彩るこのスタイルは、すでに大学時代から確立していた。

 

「いろんな解釈があると思うんですけど、陶器の良さを引き出そうとするんではなくて、僕は陶器の良さを隠すことによって、使ったときに本来の良さを引き出せればいいんじゃないかと思った。陶器を使ったときの感触は隠しきれないじゃないですか。」という言葉がとても印象的だった。

 

中囿さんが、「銀彩」を選ぶ理由。それは、一つにはキャッチーな表現ができることにあると言う。通常の陶器と違い、銀を使って水玉やボーダー等を自由にデザインできるのだ。あえて陶器らしさを感じさせないデザインは、見た人が面白いなと思うきっかけになる。それは、まさに服のコーディネートと同じだと中園さんは話してくれた。

 

そしてもう一つは、使う人によって器が育つという魅力にある。本物の銀を使うため、環境や使う頻度によって酸化の仕方が変わっていく。器がどのように変化するかは、器の持ち主次第なのだ。

 

この銀彩の作品によって、「器に興味がなかった人が、器に興味をもってくれることが一番嬉しい。」と教えてくれた。中囿さんがいかに使う人のことを考えて、作品を作っているのかを実感した。

 

大学生のころから作り続けてきた陶器。しかし中囿さんは、「陶器を作ろうと思っているよりも、そもそも生活を豊かにしたいなという感じ。生活をより良くできるようなことをしたいっていうのが主体。」と予想外の言葉を発した。人を楽しませるため、生活を豊かにするための表現方法がたまたま陶器だったということだ。

 

中囿さんが手がけるものは、器だけに限らず机やイスなどと幅広いが、どれも暮らしの中に取り入れたくなるようなデザインだ。例えばお気に入りの服を身に着けたときに得る満足感のように、日々の暮らしの中にもお気に入りの色と楽しみを与えてくれる。自分だけの陶器を育て、そして生活を楽しんでいく。そんな暮らしを始めるための作品がここにはある。

  

 ※上記の内容はすべて取材当時のものです。