新美隆昌 (テラコッタ新美)

土のもつ温かみと素朴さを伝える

 あたり一面愛らしい動物や埴輪の土器が広がる場所。まるでジブリ映画の一場面のような雰囲気が漂っている。ここテラコッタ新美で現在三代目として伝統技術を継承しているのが新美隆昌さん。イタリア語で「素焼き土器」という意味をもつテラコッタ。三河の土を使用して作られている。もともとは煙突や土管の製作から始まった工房で、今は植木鉢などのガーデニンググッズやランプシェードなどの日用雑貨品へと、新美さんのアイデアで形を変えながら親しみ続けられている。

 

 現在テラコッタ新美の象徴とも言えるのは、動物をモチーフにしたアニマルプランター。新美さんがシンプルな植木鉢のシリーズに動物の形を取り入れたのが始まりだった。テラコッタの植木鉢は、土を利用して作られるため通気性がよく、植物にとって根が呼吸しやすい環境を作ることができるのだ。10年程前のガーデニングブームで市場に植木鉢が溢れた時、他にないものを作りたいとの思いから生み出された物だった。

 

アニマルプランターは、どれを見ても素朴な表情で心を惹きつけられてしまう。「リアルに作りすぎないように、なるべくデフォルメをする。特徴だけを伸ばしてあげて製作する。」と教えてくれた。また、全て上を向いているポーズも印象的である。新美さんは、「どうしても下に置く物なので、その時に目が合うように作っているんです。お客様もいっぱい作品が並んでいると迷うんですけど、だいたい初めに目が合った子を買う人が多いです。」と笑いながら話してくれた。一つ一つ手作業で作られるために表情も少しずつ変わる作品。まるでペットのようにかわいがってしまいたくなるほどの魅力を持っている。

 

動物の種類はブタやウサギやネコやイヌなどバリエーションに富んでいる。「お客様から依頼があれば形にしてみる。」と新美さんは言う。動物をモチーフにした作品は、植木鉢以外にも傘立てや蚊遣りなどがある。

 

今回取材で訪れたときにちょうど製作していたのは蚊遣りだ。動物の顔となる土台を成形しているところだった。手作業で形にしたとは思えない表面の滑らかさ。加工しやすいように土の固さを調整しておくための念入りな手入れや、何種類ものヘラを使いこなす技術から出来上がる物だった。

 

また焼成時の温度が性質に影響する土。収縮具合で粘土の密度が変わり、水を通すか通さないかが変わってくると言う。ここでは一番吸収性が良い900℃~1,000℃で焼いているそうだ。そして、ひびが入ることなくきれいな焼き色で仕上がるのだ。

 

土という自然素材で作るものだからこそ、一つ一つの過程で慎重に扱わなくてはいけない。その分出来上がる作品は美しく、温かさを感じさせる。さらに新美さんの手がける動物の表情は、作品からやさしさが表れ、心を和ませてくれる。

 

※上記の内容はすべて取材当時のものです。