NiJi$uKe

*虹を架けて*

 アクリル絵の具で描かれるカラフルな動物たち。そのどれにも躍動感があって、優しさや力強さ溢れる色のシャワーが目に飛び込んでくる。NiJi$uKeさんは出身地の広島を飛び出し、東京だけでなく大阪や名古屋など全国各地で意欲的に出展し注目を集めている。

 

 

 -虹をつくりだすもの-

 マーカーペンで下書きをし、キャンパスナイフで重ねられていく独特な配色。『思わず見てしまいたくなる「虹」のような作品』というコンセプトのもと、NiJi$uKeさんのフィルターを通して動物一体一体に命が吹き込まれていく。配色は独自の法則を持って描かれていると言うが、どうやらそれは彼の特別な条件に起因しているようだ。

 

「実は、僕は色弱なんです。」

 

 絵を描く作家さんからあまり聞くことはない一言が、NiJi$uKeさんの口から飛び出した。

「どうやら色を完璧に判別できていないらしいんですよ。もちろん色を選ぶ時に、おおまかには分かります。でも細かくなると分からなくなってくるんですよね。だから色を表現する時は基本的に三段階くらいに分けて描いています。“濃い色は濃い陰の部分に使う、これは明るい色だから明るいところに”…そういった感じで描いていきます。ですので、ベースの色を決めてしまったら、あとはそれより濃いか明るいかで表現していくんです。」

 

 NiJi$uKeさんがこの症状を自覚したのは小学生の頃。自宅で食事をしている時、箸立てから別々の色の箸を取り出して食べていたり、周りの友達との会話で内容が合わなかったりしたことから発覚したのだという。

「だから、『その色とってください』は当時から怖い頼み事かも。カラー番号で言ってくれれば分かりやすいんですけどね。」

 そんな冗談を交えながら、幼少時代の出来事をNiJi$uKeさんは教えてくれた。これが、こんなにもハッキリした色使いやバランス感を実現させている理由なのだろう。

 

「もしかしたら、みなさんには僕の目で見ているのとは違う風に、作品が見えているのかもしれないですね。」

 

 

 表現手段としての動物-

 NiJi$uKeさんがこのような絵のスタイルになったのは大学3年生の時。もともと工作が好きで物づくりには関心があったというが、絵自体をしっかり始めたのは大学入学後なのだという。

「四年間で何か見つかればいいなという気持ちで最初は入りました。」

 

 在学中は授業やアートイベントを通してとにかく多くの刺激に触れた。そんな中、カラフルに描くことの楽しさや動物画の魅力に徐々に惹き込まれていったのだという。そして彼がここまで動物を描き続けることには、万国共通の理解が動物にはあるためだという。

「日本の文化を作品に取り入れて、それを海外に伝えたいって人もいるじゃないですか。もちろん日本の風景や神社仏閣などをモチーフに表現することは素晴らしいことだと思います。でも、文化の違いだったり感覚の違いで結局受け入れられないことも多いと思うんですよ。その点、動物って言葉や思想に縛られない。そして僕らには聞き分けることは難しいその鳴き声ひとつひとつに、嬉しかったり悲しかったりがやはりあるんです。一体ごとに表情も違う。それを色で表現できたらいいなと思っています。」

 万国共通で愛される動物に、NiJi$uKeさんは自身から溢れ出す色をのせていく。

 

「動物を使っていること以上に、“色”を見てもらいたいです。色をブランド化していきたいと思っています。『この色だからNiJi$uKe』みたいなブランド力を、絵に持たせられたらいいですね。だから、もしかしたら動物である必要は今後なくなってくるかも。」

 


 絵に対する姿勢-

 使っているアクリル絵の具はごく普通のもの。学生のときから使っていて、今でも関西にある店から通販で取り寄せているのだという

「出来上がったときの発色や光沢感が、とても自分の作品にマッチしていて気に入っています。」

そしてキャンパスナイフも100円ショップのものを使うなど、NiJi$uKeさんは世間の評価とは関係なく、自分の目と直感で道具を見極めていく。

 

「僕は絵を売ってはいますが、絵を買う感覚は分かっていないんですよね。絵って生活する上で必ずしも必要ではないもの。今のところ何百万で売ったりする感覚は僕には分かりませんし、もし仮に周りの人々が今後そのように評価してくれたとしても自分ではしっくりこないと思うんです。そういった絵とお金の結びつきの上で、いつになっても自分が調子に乗らないようにしていきたいですね。将来は自分の絵を使った雑貨ブランドを立ち上げたいのですが、それまでは“一人の画家”として、絵とそれに対するお金はわきまえていきたいです。

 

 大人でも子どもでも、空にかかっているとついつい見上げてしまう虹。NiJi$uKeさんの絵にも性別や世代、そして国籍を問わず私たちを振り向かせる、そんな虹のような魅力がたくさん詰まっている。

 

※上記の内容はすべて取材当時のものです。