杉野順子 (洋梨雑貨店)

*紙から広がる小さな世界*

ショーケースの中に飾られた小さなケーキや小さなお家。細かいところまで再現されているこの作品を見ていると、思わずこの小さな世界へ入り込んでしまう。これらを全て紙で制作しているのは杉野順子さん。2005年に洋梨雑貨店という名で活動を開始し、2012年4月に実店舗をオープンしたのだ。

 

 

-365個のお家-

杉野さんが立体の作品を作り始めたきっかけは32歳になってから通いなおした美術の短期大学だった。授業の課題となった立体の作品に夢中になり、その後の卒業制作で作成した物が、立体の365個のお家カレンダー。一番好きな物を作ろうと思った時に出た答えが「家」だったのだ。「見に来る人が自分の誕生日の家を楽しそうに見つけている姿が面白くて。」と笑顔で話してくれた。そして365個のお家を制作した後もまだ作り足りなくて、どんどん作りたいという思いが湧いたと言う。

 

洋梨雑貨店が作り出すお家は、とんがり屋根で煙突があるスタイルだ。これらには、「だれが見てもお家って分かるような単純な形が好き。」という杉野さんの気持ちがこめられている。そして参考にしているのはヨーロッパの街並みだと言う。「ずっと見ていられるんです。」と言ってお家の写真集を見る杉野さんの表情はとても活き活きとしていた。

 

 

-助けてくれる紙-

写真集に載っているような石造りの家やレンガのあるお家も、杉野さんの手にかかれば全て紙で表現できてしまう。紙といっても中を覗けば凸凹があったり、厚みがあったり、違う味をもっている。杉野さんは、「家の雰囲気を出すために、紙の質が助けてくれる。」と言う。紙の持つそれぞれの性質の扱い方で、より作品の完成度を高めているのだ。

 

そしてメッセージカードとなるお家の箱は、開けると中にもすてきな作品が隠されている。ケーキ、ピアノやベビーカーが、より一層可愛らしい世界観を演出しているのだ。中でもバリエーションが豊富なケーキは、杉野さんが実際に食べたい物を再現して制作されている。ケーキのデコレーションまで、リアル感を出すような仕上がりになっているのだ。紙から細かくパーツを切り抜いては、ずれのないように張り合わせていく。「紙が優しいので、紙の方に柔軟に対応してもらっています。」と話してくれた。

 

 

-広がる紙の世界-

メッセージカード以外にも紙のお家がモチーフとなったネックレスやクリスマスツリーの飾りなど、作品の幅がどんどん広がっている。どんなものであっても、「紙で作れるかもしれない。」と杉野さんはついつい考えてしまうと言う。

 

小さい頃から紙が好きでお菓子の箱や包装紙をなかなか捨てられない子だったと話す杉野さん。そして作品を制作し始めてからは、さらに紙に対する見方が変わったという。あらゆる紙に興味を持ち、その素材の良さを最大限に生かしていく。洋梨雑貨店の作品は今までとはまた別の見方で紙を楽しむことを教えてくれる。

 

 ※上記の内容はすべて取材当時のものです。