田中友紀(星ノ肌)

*素材の変化を楽しんで*

 ジャンルや素材にとらわれず作品づくりを楽しむ、田中友紀さん。太陽の暖かい日差しがいっぱいに降り注ぐ自宅の一室で、田中さんは今日も制作に打ち込んでいた。作り出すものは、アクセサリーや雑貨、近頃では食卓にも並べられるようにと金属製のプレート等も手がけている。それらはどれもシンプルでありながら、思わず手にとってしまいたくなるような優しい輝きを持っていた。

 

-素材の魅力-

もともとはグラフィックやビジュアルの勉強をするために、芸術系の大学に入学。しかし授業で金属や革などの素材に触れた時、素材が変化していくおもしろさを感じ、そのままその魅力にはまっていったのだという。

「金属はどこか冷たい感じがしますが、熱してたたいていくことで温もりを感じるものになっていくことを知ったんです。」と嬉しそうに話してくれた。

 

どんな素材であっても、温度や湿度、また経年変化によって色や味わい、感触が変わっていく。その変化が楽しいから素材を選ばず、色々な物を触るのだと教えてくれた。革をお湯で湿らせて柔らかくしたり、銅を熱して茶色や黒色、時には赤色の表情をもたせたり。田中さんが素材を手にとれば、新しい変化が作品となり、私たちを楽しませてくれる。

 
-くらしとアートを結びつける-

制作する際には、日常のほんの些細なことが影響を与えているそうだ。「自然にもたらすものが好きなんです。」と話す田中さん。散歩している時の鳥の声や、工事の音さえも心をわくわくさせるという。そこから簡単なドローイングを描き始めたりするそうだ。その言葉通り部屋の壁には、らくがきのように描かれた紙がいくつも張ってあった。まずは自分から吐き出して、そこから噛み砕いて形にしていくのだ。

 

そして扱う道具においても、自然とありのままに出る味を大切にしているようだ。田中さんが扱う金づちは、傷のついた使い込んだものが多い。その中には50年以上経ったものもある。その傷だらけになった金づちの表面でたたくと、それがまた一つの新しい表情を作るのだという。「自然に傷がついたものも素敵だなって思います。」と笑顔で話してくれた。新品の道具から出る味とはまた違う良さを、作品に与えることができるのだ。


-引き立て役-

田中さんの作品は、素材の魅力や道具の味までも演出させて仕上げていく。それらは素朴な温かさをもちながら、どこか膨らんでいくような輝きを放っていた。

 

制作していく中で、田中さんが大切にしていること、それは「主張しすぎないもの」であること。学生時代にただがむしゃらに作っていた頃とは変わり、社会に出て色々な人と関わり視野が広がった今、方向性が定まってきたのだという。

 

「以前から使っているもの、これから集めるものと一緒に、『共存』するものでありたい。そんな願いからものづくりをしています。そこに特別さはなくて、気取らない姿を提案できたらなと。脇役は主人公を引き立てる、そんなようなものでいいのです。」



この言葉がまさに星ノ肌の原点。これからも多くの人と「共存する」作品が、ここから生まれていく。


※上記の内容はすべて取材当時のものです。