友田秀一 (屑鉄工房)

*町工場から世界に一つだけの作品を作り出す鉄工職人*

弥富市にある一軒の鉄工所。中に入ると一人の男性が火花を散らしながら作業していた。「目を悪くするから見ない方がいいよ。」といってバチバチと音がなる中、手を動かしているのは友田秀一さん。屑鉄工房を設立し、金属を用いてオブジェ、アクセサリー、ランプなどの生活雑貨を作り出している。また現在はお店の看板や表札、外装・内装のプロデュースまでも手がけている。

 

友田さん、実は友田工業(鉄工所)で日中は鉄工職人として働いている。景気が下降気味になり、何かしなければいけないなという思いからこの事業を始めたのだ。ステンレスの板にメッセージや名前を刻印してキーホルダーやネックレスを販売したのが最初だったと言う。その後似顔絵作家、写真家、粘土細工作家の飲み友達たちとマヨネ~S’を結成し、覚王山祭りに参加。そこで予想外にお客さんの反応があった。売れるとおもしろく、プレスの抜けカスや板の端を使って恐竜やバイクを作り出すようになったという。

 

現在、屑鉄工房の代表作となっているのは、オリジナルキャラクターの“ボルトマン”。人間の動きをモデルに屑鉄、ボルトやナットなど少ないパーツで成形されたオブジェだ。これは路上販売のメッカとも呼ばれるロンドンのカムデンマーケットで二日間出店した際、子供が買いやすいような低価格で、おもしろいものがないかと考え、生み出したものだった。

 

ボルトマンの動きはバリエーションが豊富で、「やられっぷりが大事。」であるという。格闘技をテーマとしているものだけで60種類以上のポーズがある。友田さんは、「コレクターの人がいて、その人たちを驚かせるためにどんどん新しい物を開発している。」と話してくれた。時にはリクエストもあり、お客さんからアイデアをいただくこともあるそうだ。

 

今回実際に数々のボルトマンを見せていただいたが、どれを見ても面白くて思わず笑ってしまうような愛らしい作品だ。一つ一つが躍動感に満ち溢れ、本当に生きているかのように感じてしまう。「製作するときはデッサンなし。頭の中で立体を描く。」という。無機質な金物用品たちが、友田さんが手を加えるといつの間にか心を持った生き物のような作品に出来上がっていた。

 

また鉄工所の中にはその他にもボルトマンとは全く違うジャンルの物で、とても屑鉄で作られたとは思えないような作品があった。鉄でここまで再現できてしまうのかと目を疑うほどの細かさだ。そんな作品の表現力は時間を忘れてついつい見入ってしまうほど。名古屋城を背負ったヤドカリ、羽の生えた鯨や骨のあるカマキリなど、ユニークな物が多いのだが、一つ一つの作品に由来があり、技術だけではなく発想力にも驚かされる。

 

屑鉄で作品を作り始めて13年。いくつもの祭りや展示会に参加してきた友田さん。

 

「朝から晩まで普通の鉄工所のおじさんでここに一日中いて誰と話すわけでもなく、帰ってご飯を食べてお風呂に入って寝るだけの生活が一変した。お客さんはメールくれるし、お店に出せば話しかけてくれるし。」

 

最近では、チェンソーアートの世界チャンピオンとの共演を果たしている。この共演は彼が話を持ちかけたことから実現したことだった。「やりたいと思ったことは口に出してやってみることがいいのかな。」と言う友田さん。今後も彼の可能性は計り知れない。

 

※上記の内容はすべて取材当時のものです。