山田浩久(Wood Accessory)

*銘木からつくり出す和風モダンな世界*

 見ればみるほど伝わってくる、木々の色合いや模様の味わい深さ。それでいて、素材が木であることを忘れてしまうほど繊細で美しいデザイン。これらが絶妙に組み合わさり、山田浩久さんのアクセサリーは出来上がる。


-世界の木からつくり出す-

「実は、木は一番嫌いな素材だったんです。」と山田さんは予想外の言葉を口にした。

「以前サンドブラストの技師として働いていた頃に、ガラスや金属、セラミックなどの様々な素材を触っていて、大体それぞれの特徴を分かっていたんです。しかし木に関しては種類が多く、木目も一つ一つ違うから、使い方が定まらなかったんです。」と話してくれた。

 

しかし山田さんはそのうちに“ナイフ一本で削って形をつくれる”という木の魅力に触れる。

「ガラス・金属・石は炎を使いこなしたり、特別な道具がないと思うような加工はできないが、木は削ればいくらでも形を作れる。全てはそこからです!」

 

最初はもともと趣味であった釣りのルアーを木で制作していた。そんな時、たまたまそれを見せた人から「木でこれだけのことができるなら、アクセサリーにしたら仕事として成り立つんじゃない?」という一言をきっかけに、木工制作のメインがアクセサリーへと定まった。

 

最初は日本の木(ケヤキやヒノキなどの身近な素材)のみを使っていたのだが、“アクセサリーにした際の高級感”を出すため、扱う木の種類は日に日に増えていったという。現在はおよそ70種類の木を扱っている。作業場には知る人ぞ知るような世界の銘木や、採取困難な希少な木が溢れていた。例えばスネークウッドと呼ばれるヘビ柄模様の木や、天然香木のパロサント、また着色料を一切使わず、自然の力によって美しく赤や黄、緑に色付いた木など。それらはどれも、普段はなかなか目にしないものばかりである。

 

「お客さんにも銘木を知ってもらう為に、それぞれの木の特性を書いたカードも作品と一緒に渡しているんですよ。」と山田さんは教えてくれた。

 

1.5mmの刃から抜き出していく空間-

アクセサリーをつくる際、山田さんは必ず取り入れているものがある。それはすかし柄だ。

 

「木は見た目がべっとりしていてどこか重々しい印象があるから、空間を入れたいと思ったんです。空間もデザインの一つだと思うんです。」

 

その空間は、丸い形をくりぬいた単純なものもあれば、結晶の形をかたどった複雑なものもある。どんな形もわずか1.5mmの刃一本の糸鋸で切り抜いていくのだ。

枝一本でも折れたら全てを台無しにしてしまうほど繊細な作業だが、山田さんの手に迷いはない。「指の力も集中力もいるし、根気勝負ですね。」と山田さんはいう。

 またその透かしの中には、華やかさをプラスするために天然石をはめこんだものもある。透かした場所から天然石にも光が差し込み、さらに輝きを増していく。

 

山田さんが作るアクセサリーはシンプルでありながら、存在感は決して劣らない。

そこには素材の木から生まれる温かさだけではなく、装飾品としての美しさや華やかさ、そして高級感が兼ね備えられているのだ。


-広がり続けるデザイン-

山田さんがつくり出すアクセサリーのデザインは、驚くほどに多種多様の世界である。代表作である“月と太陽”を始め、食べ物や楽器をモチーフにしたものまで展開している。そのヒントは、奥さんの料理本だったり、お子さんの教科書からだったり、なにげない生活の中から生まれるのだという。またお客さんからのオーダー品に関しては、その人の雰囲気や背格好、ファッションからイメージをつくり上げていく。どんなデザインであっても、木から削り出して表現してくれるのだ。

 

木彫りの世界に、今までにない和風モダンなイメージをもたらしてきた山田さん。その手からは今日もまた、新しいイメージが広がり始めていた。


※上記の内容はすべて取材当時のものです。