Yuki Tanida(ART STUDIO YUKI)

*黒板に浮かび上がるビビッドなアート*

 海外のカフェやレストランの看板で数多く見かけるオーストラリア発祥のチョークアート。黒板を背景に描かれる鮮やかなイラストは見る人に強い存在感を与え、近年では日本でも広く認知されつつある。

 滋賀県を拠点に活動するYuki Tanidaさんも、このチョークアートの魅力を発信している一人。飲食店の看板やウェルカムボードの制作など、多くのシーンでチョークアートを手がけている。

  

−指でなじませながら−

 黒板に向かい、スイスブランドのチョークを走らせるYukiさん。指で色をこすり、少しずつなじませながら立体感を出していく。

 

「チョークアートと呼んではいますが実はオイルパステル、クレヨンのようなものなんですよ。油絵のように色をのせながら立体感を出していきます。」

 遠くから見た時に見栄えがするように、絵を中心に自分が動いたり立ちあがって描いたりするなど、距離を置きながら描いていくのだと言う。

 そして黒板も特殊なもの。ヤスリのような表面をしており、チョークを削るようにくぼみに塗料をはめていく。

 

「右手でチョークを持って、中指や薬指などでこすります。私の場合は親指以外全部使いますね。色が混ざらないように指ごとにこする色を分けています。細かい絵で指が入らないところは綿棒を使うこともありますよ。ずっとこすっているので、指紋がなくなってしまいます。」

 隣りあう色をくるくると混ぜながら、美しい発色やぬくもりあるグラデーションがYukiさんの手から生み出されていく。

 

 

−カフェとチョークアート−

Yukiさんは趣味である水彩画を続けながら、26歳の時にカフェを開業した。そしてある時、テレビ番組でチョークアートを知ったことが大きな転機となったのだという。

 

「見た瞬間に心を奪われ、これだ!これを描きたい!って思いました。そう思った翌日には本屋へ走りチョークアートに関する資料を集めたり材料を取り寄せ、ただただ夢中で描きました。描いている時は、初めてなのに胸がワクワクする気持ちで、今でもその時のことはよく覚えています。」

 

 思い立ったら即行動、そんなYukiさんらしいエピソード。カフェの仕事を終えて夜や休日にたくさんの作品を描いた。そして次第に自分の店の看板も描いていったのだという。

 

 依頼されたチョークアートの納期が近いと丸一日描いていることも多いという。

「お昼ご飯を食べる時間ももったいないと思ってしまうくらい楽しいんです。全然疲れませんよ、あっという間。だから“無理矢理やめる”んです。翌日のお店のために。」

 

 

−自分が輝いていられるもの−

 色を塗り始めたら油断は全く許されない。濃い色に薄い色が誤って付いた場合はまだしも、白の上に赤や黒が付いてしまった場合は油絵のように塗りつぶすことはできないのだという。したがって最初に白色などの薄い色から描きだし、濃い色はなるべく最後のほうで塗るように仕上げていくのだ。

 

 そして、線と線の境界線を消すことがとても大事であるという。

 

「絵に見えてしまいますからね。線を描いてその空間に色を塗るのではなくて、“色の次に色がある”感じです。その間に線はありません。」

 

Yukiさんは実物に忠実に、そして写真より印象的に仕上げていく。

 

「チョークアートは自分が輝いていられるものかなと思います。自信がもてるもの。生活の全てだなんて大げさなことは言わないけど、これを辞めざるをえない環境になったらどんどん老け込んでいってしまうかもしれないです。だから今こうやって描ける環境に感謝ですね。そして、いつか大きな壁面にも描いてみたいです、ハシゴを使ったりするくらい大きな。描いたものを相手に渡すのではなくて、その場所に行ってその空間の空気を感じながら描いてみたいです。もっと身体全体で描きたいんです。」

 

 カフェを営みながらチョークアートを続けてきたYukiさん。カフェでのお客さんとの出会いや新しいメニューを作ったりしては、それを自らのチョークアートで表現してきた。これらは確実にYukiさんの中でリンクし、さらに新たなキャンバスに一歩一歩向かいつつある。

 

※上記の内容はすべて取材当時のものです。